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会社を継ぐのは格好悪いのか?

大学生まで、会社を継ぐことは格好悪いと思っていました。ボンボン息子じゃん、みたいに。だから、実家には住んでいましたが家族とは少し距離を置いて、出来る限り外の世界とつながりたいなと思っていましたね。〇代目コンプレックスみたいなものかな。

子供のころ、大人の事情で母方の実家に戻りました。将来は会社に入ってみたいな、家族のプレッシャーがイヤだったんですが。それ以外も、場っていうのが時代遅れな感じに思えて、会社勤めすることが普通じゃないかと。実家はメッキの匂いするし、プレスで揺れているし、環境もあまり良くなかった。働いている職人さんも、ザ・職人みたいな人が多かったから、子供のころは怖かった思い出です。

前の社長の母が病気になったことをきっかけに、少し考えを変えて家業に戻ったのですが、このコンプレックスはなかなか消えない。ただ、自分の親を助けたい!という気持ちで会社に入りました。その助けたい気持ちがコンプレックスを抑え込むような気持で仕事を始めたのですが、その親が亡くなって目標が無くなった時、モチベーションの維持が大変でした。「格好悪い」と思う気持ちはなかなか消えなかったです。

考えてみれば外の会社で働いたって、誰かが生み出した仕事を引き継ぐわけで、自営業と何も変わらないのです。ただ、その相手が家族だと、自分の実力ではなく、一生親のスネをかじるのか、っていう感覚です。自営の跡継ぎの方は同じような感覚はあるのでは、と思います。

このコンプレックスは他の人に変えてもらうことは出来ず、自分の脳みその中の思考を変えるしかないんですね。「会社をこの先やっていく!」という決意は一瞬で出来るのですが、モチベーションを継続するのは時間をかけていくしかない。私の場合は、とにかく自分で新しい仕事を取ること、を10年以上やってきて、それが自信となり、コンプレックスは自然と消えていきました。理屈より結果で自分を納得させた感じです。

今思うことは、家業を継ぐことが格好悪いか格好良いか、その考え自体が薄っぺらいものだったと思っています。それに、今の会社をずっと家族で引き継ぐこともあまり考えていない。「谷田部」っていう名前にもあまり拘りが無くなってしまいました。当社の事業には誰にも負けない思い入れがあると自負していますが、所有が誰でも、継続的にお客さんに満足してもらえれば良いのでは、と思っています。それより、目の前の仕事をこなしてこなして、その積み重ねの方がよっぽど大事です。跡継ぎが家族であろうが、社員であろうが、社外であろうが、あまり関係ない。

もちろん先代たちの残してくれた財産(※お金だけじゃなく)にはとても感謝しており、今まで何不自由なく生活できたのは先代たちのおかけです。でも、その思いが強すぎると、家を残すことにばかりフォーカスし過ぎて、「当社の事業を通し社会に貢献する」という大きな理念がどこかに忘れ去られるような気がします

現実的な話ですと、会社の借り入れは代表者の個人保証がつきますので、家族に会社を継いでいってもらう方が手続きは楽です。今、当社は借り入れがほぼ無くそのような縛りは無いので、このようなことを言えるのかも知れませんが。ただ、事業の継続=自分の家族の生活の維持、になってしまうと必ず会社はおかしくなります。自分の会社の歴史からそれは実証済です。だから同じ過ちはしないように肝に銘じております。